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『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』 1499年 - 1500年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ
デッサン力があるということは、絵の上手い下手の違いではなく情報を収集する力や伝達する能力、ものごとの構造を見極められることや構想している計画や企画を具体的に展開していく能力。
頭の中のイメージ(ビジョン)を絵に描き出す感覚を磨くことが、日常生活や一般的な仕事で見直されてきている。
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
絵(デッサン)を描くときにも「よくみる」ことが基本ですが、これは「必要な情報を見極め、的確に捉える。物事を理解する」ということです。
何かを理解するときに五感を使って知覚することは重要な役割をはたします。
絵は五感を使って描く。 対象をただ写し描くことが写実ではない。
光の入り方、その時間帯、季節感など 対象物を取り巻く(多角的)世界を
どれだけ広く感じさせることができているかが重要。
その視野の広さで伝わるリアリティが違ってくる。
普段、目にしている物事を絵に描くつもりで観てみるといろんなことに気づきだす。
絵は、思い込みや見たつもり、知っているつもりでは描けない。
物事は「見る」のではなく「観る」ことが重要で、
書物と様に「読みとく」「理解」する感覚が大切。
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
楽しむことは、本質にたどり着く。 本質を意識したり、気づいたりするだけで、脳が喜び生き返る。 絵を描くとき、ものやもの事を思い込みや観念でとらえている人と 本質でとらえる訓練をしている人とでは 描く線に違いがでる。 絵に描くと心が折れにくくなる。 サムネイルやアイデアスケッチは漠然とした「夢」を具現化するというより、 内なる欲求を吐き出す作業といえる。 目的やアイデアが視覚化されると積極的に行動できる。
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
「デッサン」は、モチーフを単に写し取るだけの表面的な描写の作業ではない。 「デザイン」という言葉の語源と同じラテン語のdesignare(デシネーレ)。 計画を記号に示す、図案、設計図、意匠の本質を捉える意味がある。
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『壁画のためのエスキース』 レオナルド・ダ・ヴィンチ
絵で必要な画力と観察眼とは 表面的な描写力だけではなく 観ているものの構造や光と影など 周りからどのような影響が及ぼされているのかを読み解き、理解する力と その本質を的確な構図や技法で効果的に伝達する力である。 この対応力は絵を描くことにとどまらず、様々な仕事にも必要とされる。 画家、マンガ家、小説家、料理人や冒険家などあらゆるジャンルにおいて、 アマチュアとプロと呼ばれる人の違いは 技巧より、よく観る力、取材能力にその差がでるのかもしれない。
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『ウィトルウィウス的人体図』 1485年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ アカデミア美術館
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『ほつれ髪の女性』 1508年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ パルマ国立美術館
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『子宮内の胎児が描かれた手稿』 1510年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ
線一本描くにしても集中力とイメージが大切。 クロッキー力は、書道や華道、茶道,料理、スポーツ、音楽など様々なことに繋がってい
く。
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『女性の習作』 レオナルド・ダ・ヴィンチ
上達させるには描く枚数も大切ですが、やはり何を意識して描くかで随分と成長の仕方に
違いがでてくる。
絵は思い込みを外し、よく観て理解するだけで描ける。
描けないと思い込んでいるのは的確な情報を捉えていないだけで
才能やセンスがないわけでも下手なわけでもない。
絵を描くことへの苦手意識、思い込みを外すだけで一気に上達してしまう。
絵を描くことは過酷な修行ではない。楽しみ(感覚的知性)を磨くこと。 基礎から順番に長い時間をかけて学んでいくのではなく、自分の目的に合わせて必要な
アプリを集めていく感覚でアートのファンダメンタル(基本要素)を組み合わせていくと
よい。
分かりやすく、普通に見えることほど凄い。
複雑で、分かりにくく感じるものは
芯、軸、骨格、システム、本質を見抜いて、シンプルに捉えればいい。
画力とは決して「写実力・描写力」の範囲に止まるものではなく、
むしろ「リサーチ力・構築力・伝達力」といえる。
この能力は、デザイン・アート系の特殊な職業だけではなく、
日常生活や一般的なすべての仕事にも必要で大切なスキルといえる。
本質を見抜くための必要最低限の基本技能(絵画技法だけではなく)は、
エッジ・スペース・相互関係・光と影・形態(ゲシュタルト)の5つ。
だから絵を描くことは世の中の物事を読み解く能力を磨くことに繋がっていく。
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『布のデッサン』 レオナルド・ダ・ヴィンチ
絵を描くことは、脳を活性化させるための手先の運動と考えた方がいい。
体を動かした方が喋りやすかったり、考えがまとまったりする。
絵を描くことで手先と脳とが連動して活発に機能していき、
新鮮な発想が浮かぶ脳のストレッチになる。
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『リビヤの巫女のための習作』1510年頃 ミケランジェロ・ブオナローティ
絵画で、エチュード【 étude】が「習作」と訳されていることで練習することのように
認識されているが、本来は「研究し探る」こと。 ダ・ヴィンチのエチュードへのこだわりを観るとその違いが分かる。
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『女性の手の習作』 レオナルド・ダ・ヴィンチ
西洋文化がなだれ込んだ明治時代の間違った認識と和訳のまま教育されていることが多々ある。
絵を描くことは、
絵のプロになるためだけに必要なことではない。
絵の描き方を習うということは、
じつはものの観方、多角的な考え方、伝え方を学ぶということであり、
それはたんに目で見るよりもずっと多くのことを意味している。
よく観て繰り返し絵を描くことで本当のことに気づいていく。
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
デッサンで必要な観察眼とは表面的な描写力だけではなく、
観ているものの構造や光など周りからどのような影響が及ぼされているのかを
読み解き、理解する力である。
このリサーチ力、伝達力は絵を描くことにとどまらず、様々な仕事にも必要とされる。
絵を描くこともそうだが、続けていると
それまでとは違った物事が見えるようになってくる。 最初は目の前にある問題だけしか見えなかったのが情報の領域が広がっていき、 その物事に影響を及ぼしている周囲の状況が見えてきて、本質を理解していく。
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大抵、思い込みに惑わされている。 自分の思い込みは気がつきにくい。 絵を描けなくても知っていた、見ていたつもりでいた 日常の見慣れたものを絵を描くようによく観て見直すと
実は知らないことだらけだったことに気がついていく。
絵に描くと自分の思い込みと実際の違いがよく観えてくる。
考え事は絵を描きながらがいい。
絵を描くと頭がクリアーになる。 頭の中のイメージを実際に紙面に描き、 視覚で確認していった方がイメージを具体化できる。 発想も具体的に展開していきやすくなるので
理想の現実に近付けていくことができる。
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『子どもの研究』レオナルド・ダ・ヴィンチ アカデミア美術館素描版画室
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『人体スケッチ』 ミケランジェロ・ブオナローティ
絵を描くことも 仕上がった達成感というよりは
「もっと良くしたい、もっと描きたい」 といった過程で成長が加速し続ける。 だから新作を描き続けるクリエイターは高齢でも元気な人が多い。 『幸せを感じるのは成長が加速する時、止まれば消える』 フランスの経済学者ダニエル・コーエン氏の言葉
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『跪く女性の衣装の習作』 レオナルド・ダ・ヴィンチ
皆と同じものを日常で見て、同じような環境の中で、 他の人が気づかなかったことが気になり、 気になってしょうがなくなり探求が始まる、それが発見。
『最も高貴な喜びとは、理解する喜びである』-レオナルド・ダ・ヴィンチ
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『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿』より
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