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  • 執筆者の写真聖二 文田

アートの民主化 Chapter 4 強い想いが人を動かす

更新日:3 日前




イメージ(目的・意図:何を望むのか)

「意図するイメージ・浮かぶイメージ・沸き上がるイメージ」




イメージとは、私たちが日々の生活や創造活動において、思考や行動の指針となるものです。無意識に浮かび上がるものや、意図的に描くもの、それらは私たちの内なる願望や理想を映し出します。

アートにおける「イメージ」は、しばしば深層心理に潜む欲求や社会的な背景に根ざしています。


『蛇使いの女(The Snake Charmer)』 1907年 アンリ・ルソー



   この章では、イメージがどのように人々の行動を促し、社会に影響を与えるかを探ります。



意図するイメージ

「イメージ」という言葉は多義的であり、さまざまな文脈で使用されますが、その本質は「何を望むのか」という問いに帰着します。たとえば、ルネ・マグリットの作品『イメージの裏切り』は、見る者に「現実とイメージの関係」を考えさせます。


『 La trahison des images(イメージの裏切り)』 ルネ・マグリット


私たちは日々、意図的にイメージを形成し、未来や他者、あるいは自分自身に投影します。しかし、そのイメージが現実と一致することは稀であり、そこにこそ芸術の力が発揮されます。


歴史的背景:19世紀末から20世紀初頭にかけて、産業革命の影響で社会構造が大きく変わり、人々の生活や価値観にも変化が生じました。この時代、人々は急激な社会変化に適応するため、意図的にイメージを操作し、現実を超越した理想を追求する傾向が強まりました。こうした背景が、シュルレアリスムや象徴主義といった美術運動を生み出し、芸術家たちはそのイメージを通じて新たな世界観を提示しました。


『愛の歌』 1914年 ジョルジョ・デ・キリコ


『記憶の固執』1931年 サルヴァドール・ダリ


『不可能の企て』 1928年 ルネ・マグリット


『リスニングルーム』1952年 ルネ・マグリット



浮かぶイメージ


芸術家やクリエイターが何気なく思い浮かべるイメージは、しばしば彼らの作品の核心を形成します。これらのイメージは、経験や記憶、あるいは夢や無意識の中から自然に湧き上がってくるものです。

例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた『ウィトルウィウス的人体図』は、彼の人体に対する深い理解と理想的な比例への追求が形となったものです。


『ウィトルウィウス的人体図』 1485年頃 レオナルド・ダ・ヴィンチ


社会的影響:アートにおける浮かぶイメージは、個人の内面的な探求だけでなく、社会全体の無意識をも反映します。特に戦時中や社会的混乱期においては、集団無意識が大きく揺れ動き、それが芸術作品に反映されることが多いです。


ゴヤの助手の作とされた『巨人』 フランシスコ・デ・ゴヤ


シュルレアリスムはその典型で、20世紀の二度の世界大戦の影響を受け、夢や無意識の世界を表現することで、社会の混乱や不安を映し出しました。


『叫び』1893年エドヴァルド・ムンク



沸き上がるイメージ


沸き上がるイメージは、強烈な感情や衝動と結びついています。それは、個人の潜在意識から突如として現れ、時には夢や幻覚の中で現実のように感じられることもあります。

ジョルジョ・デ・キリコの『通りの神秘と憂愁』は、こうした潜在意識から来る強烈なイメージの表れであり、見る者に現実とは異なる次元の存在を感じさせます。


『通りの神秘と憂愁』1914年 ジョルジョ・デ・キリコ


文化的意義:沸き上がるイメージは、個人の創造性だけでなく、文化や時代精神を反映するものでもあります。ルネ・マグリットの『大家族』のような作品は、日常的な風景や物体を組み合わせることで、新しい視点を提供し、見る者に強烈な印象を与えます。このような作品は、単なる個人の表現にとどまらず、時代の社会的・文化的状況を映し出す鏡ともなります。


『大家族』1963年 ルネ・マグリット



結論:アートの民主化とイメージの力


「アートの民主化」とは、芸術が特権階級のものだけでなく、広く一般に開かれたものであるという考え方です。




この章では、イメージがどのように人々の心を動かし、社会を変革してきたかを探りました。強い想いがイメージを生み、そのイメージが行動を促し、やがて社会全体に影響を及ぼすのです。



美術史の中で、多くの芸術家たちが自身の内なるイメージを形にし、それが時に社会の流れを変える力を持ちました。現代においても、アートは社会の鏡として機能し続けており、私たちの内なるイメージを掘り下げることで、新たな未来を切り開く力となるでしょう。






≪アートの民主化 Chapter 5 "好き"が最強パワー≫ に続く

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