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執筆者の写真聖二 文田

四万年の物語 【アートの民主化】

更新日:2024年11月28日


「アートの民主化」をテーマに、アートの歴史と人間の感覚的知性の関係について語ります。アートの役割や意義が時代とともにどのように変化し、またそれが人々の生活や文化にどのように影響を与えたかを明示します。



「嬉しい、楽しいは、絶対的に正しい」


 脳が喜ぶと感覚的知性が磨かれる。人工知能(AI)が人間のような知性に到達するには、「楽しいからやる」「嬉しいからやってしまう」「誰かが喜ぶからやる」といった感情的な動機に基づく行動が鍵である。

 この感情の豊かさこそが、人間が持つ創造力と行動力に結びつき、アートを生み出す原動力となっている。


◎人間は以下の3つの段階で、創造と進化を実現してきた:

  1. 無から有を生み出す(0を1にする):これは新しいものを創造する力であり、アートに代表されるような、完全な創造的活動である。

  2. 既存のものを効率化する(1を9にする):AIの進化はこの領域に属し、既存のデータや技術をもとに最適化や合理化を行う力である。

  3. 限界から新しい価値を見出す(9を10にする):これは人間が進化の過程で直面する挑戦であり、成長の限界を超えて新たな価値観を生み出す力である。アートはこの領域に属する。



アート思考とは


 アート思考は、A点からB点までの最適な手段を見つけるのではなく、B点そのものを発明するプロセスである。このプロセスで重要なのは、「なぜ発見できたのか?」という問いかけに対する内省だ。発見や気づきが新たな発見によって薄まることがある一方で、発見に至る過程こそが学びの核心である。

 アートの歴史は、このように人間の思考の発展を可視化するものでもある。




≪アートヒストリー:4万年前から古代美術まで≫




原始時代のアート:生と死の境界


 アートの起源は、装飾や美を追求するものではなく、生き延びるための呪術的な儀式や宗教的信念に基づいていた。


「マンモスの牙を材料に作られた約4万年前の彫刻像です。ライオンの頭と人間の胴体を

 あわせもつことから”ライオンマン”とよばれています。」



 4万年前、ショーベ洞窟の壁画に描かれた動物たちは、ただの想像上の産物ではなく、狩猟の成功を祈る部族の生活そのものを象徴していた。

『空想上の動物が描かれているショーべェ洞窟の壁画』3万2千年前


 この時代のアートは、「効く」ことが求められた。狩猟の対象となる動物を描いた壁画は、単なる美術作品ではなく、命を左右する儀式的な道具でもあった。例えば、フランスのラスコー洞窟に描かれた動物たちは、しばしば実際に槍で突かれており、それが儀式の一環であったと考えられている。

『ラスコー壁画』ラスコー洞窟 1万5千年前


 この時代、アートは「祈り」や「保護」を目的とし、部族社会における生命の延長や共同体の繁栄を象徴していた。



古代エジプト:永遠を刻む


 古代エジプトの美術は、永遠の生命や死後の世界との関わりが中心であった。


『古代エプト彫刻:彫刻家は「生かしつづける者」とも呼ばれた』



 エジプト人は、現世と死後の世界を深く結びつけ、墓所の壁に「永遠の生命、健康、富」といった祈りを込めたメッセージを刻み込んだ。

 彼らにとってアートは、来世での繁栄を確保するための重要な手段であり、神々との対話を可能にする媒介でもあった。


『死者の書』


 このエジプト美術の思想は、後のユダヤ教やキリスト教の「最後の審判」などの宗教的概念に多大な影響を与え、宗教画や聖なる象徴としてのアートが誕生する基盤となった。



古代ギリシャ:美と調和の追求


 ギリシャ時代に至ると、アートは単なる宗教的な儀式から、より人間の美的価値を追求するものへと変貌を遂げた。


『ミノアの数字の壁の壁画のフレスコ画クノッソス:レタ島ギリシャ』


『古代ギリシャ壺』


 古代ギリシャの彫刻や絵画は、神々や理想の人間像を描き出し、「美とは何か?」という哲学的な問いに答える手段であった。

 『古代ギリシャ彫刻』


 ギリシャの芸術家たちは、完璧な人体表現や調和を目指し、数学的な比率やバランスを駆使して彫刻を制作した。この美の探求は、古代ギリシャの民主主義の発展とともに広がり、芸術が公共の場で共有され、社会的な影響力を持つものとなった。

『パルテノン神殿』



古代ローマ:統制と実用のアート


 ローマ時代になると、アートはより実用的で社会的な統制の手段となった。ギリシャ美術を模倣しつつも、ローマの彫刻は現実の記録を重視し、帝国の統治者たちの威厳を誇示する手段として使われた。 

『アウグストゥス帝』


 特に土木建築や都市デザインは、ローマ帝国の拡大と密接に結びついており、アートは政治的支配と市民生活の象徴となった。

『古代ローマ遺跡』


偉大なりし古代ローマ

華美な装飾を排し、実用本位の都市デザインで世界征服を目指した。

『水道橋』 南仏プロヴァンス地方ニーム近郊



 ローマ美術の革新は、後にヨーロッパ全土に影響を与え、中世やルネサンス時代の美術に引き継がれていった。



 このようにアートは、時代とともにその意義を変えつつ、人々の生活や社会を映し出してきました。アートの歴史を辿ることで、単に作品の変遷を見るだけでなく、その背後にある思想や文化、社会の変革をも読み解くことができるのです。


 アートの民主化とは、こうした人類の創造力と感覚的知性の発展を、広く多くの人々に共有し、未来へとつなげる営みと言えるでしょう。

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